株式会社 シーメイダ

寒いところにいくと鼻水が。寒暖差アレルギーとは??

寒くなると鼻水が増える…。寒暖差アレルギーは病名ではない??

 <寒暖差アレルギーとは??> 寒いところに行くと急に鼻水が出る、鼻が詰まる、などの症状でお困りの方は結構多いと思います。こういう症状をきたす病気として「寒暖差アレルギー」という言葉を聞いたことのある方もいるかもしれません。 しかし、この名称は正式なものではありません。実際、一般の検索エンジンでこの単語を検索すると数多くのサイトが出てきますが、医学論文用の検索サイトでこのキーワードで検索しても全然ヒットしてきません。医学的には本態性鼻炎、もしくは血管運動性鼻炎、と呼ばれます。何が言いたいかというと、この病気は「アレルギーではない」ということです。

寒くなって鼻水に困っていませんか?(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

<アレルギーじゃないってどういうこと??>
アレルギーとは何か?という話は実は難しいのですが…。 たとえばスギ花粉症であれば、スギに対する「抗体」という物質ができることで、スギ花粉に対して過剰に反応してしまい、鼻水やくしゃみなどの症状を起こすわけですね。つまり、アレルギーにはこのような免疫機構が関わっています。 一方で、この本態性鼻炎は免疫が関わらずに神経反射のみなので「アレルギーではない」といえます。神経反射というのは、この場合は「鼻に刺激が入る→神経を介して脳に伝わる→神経を介して鼻で症状を起こす」という現象です。 アレルギー性鼻炎では鼻水、鼻づまり、くしゃみ、の3つの症状が有名ですが、本態性鼻炎の症状は典型的ではなく、これらの一部や全部が見られます。

<アレルギーではない「鼻炎」は神経反射が強く関わっている>
アレルギー性鼻炎でなくても鼻炎のような症状をきたすことは珍しいことではありません。鼻は外からの刺激に対して神経反射で鼻症状を起こすからです。

寒さはそもそも鼻症状を起こしやすい(写真:アフロ)
そもそも寒さというのは鼻症状を起こすものです。 ある研究によれば、スキーリゾートクリニックを訪れた一般の患者の96%に鼻水が、48%にひどい鼻水があるということだったとのことです(※1,2)。また、辛くて熱いものを食べたときに鼻水が出たりする「味覚性鼻炎」も神経反射によるものです。特に欧米で多いのですが、光刺激によってくしゃみが出る体質の方もいますが、これも神経反射によるものです。

<夜寝るときに片鼻がつまる?それなら良い方法が・・・>
近年テレビなどでよく取り上げられる現象である「右脇にペットボトルなどを挟むと左鼻が通る。左脇に挟めば右鼻が通る」というのも神経反射によるものです。これを応用して、夜寝るときに片鼻がつまるなら、そちらを上にして寝ると脇に圧がかかるので上の鼻が通ってきます。

鼻づまりのある方を上にして横になると通ってきます。

本態性鼻炎の診断は実は難しい
さて、本態性鼻炎は「アレルギー性鼻炎ではない」ということが診断の大きなポイントですが、「アレルギーがない」と証明することはかなり難しいことです。だから実は「本態性鼻炎です」と診断するのは簡単ではないのですね。 また、薬剤性鼻炎といわれる「薬による鼻炎」などではないか、ということも重要な点です。一番有名なのは血管収縮剤の入っている点鼻薬のリバウンド作用によるものです。市販の点鼻薬の多くがこのグループのものなので、「使用してすぐに鼻が通るような点鼻薬の連用はリバウンドで鼻閉をきたすことがあるので気を付ける」ことを覚えておく方がよいですね。他にも経口避妊薬、降圧薬、抗不安薬などで薬剤性鼻炎が起こっている方もいますので、どのような薬を飲んでいるか、ということも確認します。 このように、他の可能性を除外した上で初めて診断されるので「除外診断」とも呼ばれます。

本態性鼻炎の治療はどうしたらいい??
<治療はどうしたらいい?自分で試せるものもある?>

治療について、はっきりと確立されたものはありません。
アレルギー性鼻炎の治療と重なる部分もあり、薬を試しながら治療していくことになります。
温度変化や煙など自分で「こういう時に起こる」とわかっているものがあればそれを回避すると良いです。また、冬に悪くなるのはそのときに鼻腔内の温度が低くなることも影響していると考えられており、アレルギー性鼻炎でも有効な鼻に蒸しタオルを当てることが有効な場合があったり、別の研究では足を温めることで症状が軽減するのでは、という報告もあります(※2, 3)。

足湯、あるいは鼻に蒸しタオルを当てる、なども試してみてよいかもしれないですね

<「抗ヒスタミン薬」は古いものでむしろ効果があることも>
投薬については、症状にもよりますが、抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイドなどが用いられます。抗ヒスタミン薬は抗アレルギー剤の中で最も処方されるものの一つです。(抗ヒスタミン薬については堀向健太先生の記事もわかりやすいのでご参照ください。)
本態性鼻炎においては、抗ヒスタミン薬の中でも現行でよく用いられる第2世代抗ヒスタミン薬ではなく、古い第1世代抗ヒスタミン薬がよく奏功するといわれています。新しい抗ヒスタミン薬では眠気や口の渇きなどの副作用が少なくなるようになっていますが、本態性鼻炎ではこの副作用とともに失われた「抗コリン作用」という作用が症状に効果があるということなのですね。しかし、緑内障や前立腺肥大の方にはこういった古い抗ヒスタミン薬は使えないことも多く、そういった持病のない方も不快な症状が出てしまうこともあるので注意が必要です。
ちなみに、抗コリン薬の点鼻薬が本態性鼻炎に効果的であることが示されていますが、本邦では抗コリン薬の点鼻薬は市販されていません。また、カプサイシンを鼻に塗る治療なども欧米の論文では見られます(※1)が、本邦では一般的ではありません。また、病状によっては漢方薬などが用いられることもあります。

薬の選択はアレルギー性鼻炎と重なっているが少し違う部分も。

<症状があまりに強い場合は手術が行われることもあります>
症状が強くて、治療にも反応が乏しい場合は、手術が行われることもあります。鼻水の分泌に関与する副交感神経である後鼻神経を切断する「後鼻神経切断術」などです。ただし、鼻水を減らし過ぎて鼻の中が乾燥すると「乾燥性鼻炎」あるいは「empty nose syndrome」と呼ばれるかなり不快な状況になるので注意が必要です。特に、鼻水で困っている高齢者の中には「加齢性鼻炎(老人性鼻漏)」と呼ばれる病気の方もいます(※4)。たとえばポルトガルでは65歳以上の方の29.8%にこの病気が見られたということで、決して珍しい病気ではありません(※5)。この病気は症状としては鼻水だけで鼻づまりやくしゃみはないということが本態性鼻炎と違う点です。また、鼻の中をみると鼻粘膜の萎縮が見られます。神経の調節異常などが関与しているといわれています。こういう方に対して手術を行うと、鼻粘膜がさらに萎縮することでさらに病状が悪くなってしまうことが予想されます(※4)。したがって、手術を行う前には鼻内所見を含めた術前の診断が重要です。

重症で薬も効かないなら手術という手段もあります。(写真:Cultura/イメージマート)

【終わりに】
寒くなって鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状でお困りの場合はぜひお近くの耳鼻咽喉科クリニックで相談してください。

鼻の症状でお困りなら近くの耳鼻咽喉科クリニックで相談してください。(写真:アフロ)

1)近藤健二. 鼻腔の病態生理と神経反射. 耳鼻免疫アレルギー(JJIAO) 35(3): 261―265, 2017
2)Silvers WS. The skier's nose: a model of cold-induced rhinorrhea. Annals of Allergy, 01 Jul 1991, 67(1):32-36
3)岡野光博. 本態性鼻炎(血管運動性鼻炎). 今日の耳鼻咽喉科・頭頸部外科治療指針第4版  医学書院
4)松根彰志. 加齢性鼻炎の診断と治療. 日本耳鼻咽喉科学会会報 122(2019)7号 p. 992-993
5)P. W. Hellings et al. Non‐allergic rhinitis: Position paper of the European Academy of Allergy and Clinical Immunology. 72(11) November 2017, p.1657-1665
(2021.1.17 午前10時に「神経反射とは、、」という部分について加筆しました。)

参考:(寒いところにいくと鼻水が。寒暖差アレルギーとは??)2021/1/16 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f2110f3f90ad93672e5cb4de407bbe3a59c7f54c

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