スキンケアの新常識!? 美肌に効くプロバイオティクス徹底ガイド。
私たちの皮膚には、1cm²あたり100万~10億個もの微生物が住んでいる。こうした微生物の生態バランスが崩れると、さまざまなトラブルが肌を襲う。そんなときに取り入れたいのが、肌に効くプロバイオティクス。美しく健康的な肌を手に入れるための最先端ソリューションを、医師や栄養コンサルタントなどのエキスパートに取材した。
人間の体内には、1兆個以上の微生物がいる。つまり私たちは、微生物──バクテリア、ウイルス、菌類などの肉眼では見えない生物──とともに生きているのだ。そして、こうした微生物は、命に関わる病気を拡散することもあれば、逆にそうした病気から人を守ることもあり、実に多様な健康問題に関与している。腸内の「善玉菌」が健康にもたらす利点は歴史的にも知られているが(ヤクルトに感謝!)、肌質にもそれと同じ理論が当てはまることが、最近の研究により明らかになってきた。美しい肌を手に入れるためには、微生物が必要なのだ。
腸内フローラと同等のマイクロバイオームが、皮膚にも存在する。
「腸内の細菌コロニーは、皮膚の状態に直接関与しています。すなわち、腸内環境が最適でなければ、素晴らしい肌を手に入れることもできないわけです」
こう説明するのは、個人や企業への栄養コンサルティングを行っているマイロンドン・ニュートリショニスト(My London Nutritionist)のカミラ・シャフナーだ。シャフナーは、体力的にも時間的にも余裕のない多忙な都会人から、出産後の母親、慢性的な健康問題を抱える人まで、幅広いクライアントに日々向き合っている。
また、クリニック・プリヴェ(Clinic Privé)のスキンケア専門家、リサ・フランクリンによれば、「腸内フローラと同じくらい複雑な微生物の生態系=マイクロバイオームが、皮膚自体にも存在する」という。事実、私たちの皮膚には、1cm²あたり100万個以上の微生物がいるとされる。人の体は、とにかく微生物で満ちているのだ。
美容業界で絶大な人気を誇るイギリスのタラントストリート・クリニック(Tarrant Street Clinic)の顧問皮膚科医を務めるジャスティン・ヘクストール医師も、次のように語る。
「私たちの皮膚は、体内の免疫システムと絶えずコミュニケーションを取りながら、身体の最前線で防衛に務めているのです」
抗菌効果の高いクレンザーの過剰使用が、肌荒れを引き起こす!?
健全なマイクロバイオームは、1種類のバクテリアが支配的な存在とならないように、生態系のバランスを保つ自己制御能力を持っている。しかし、『The Beauty of Dirty Skin(肌荒れの美)』の著者であるホイットニー・ボウ医師は、私たちはこの繊細なインフラを自ら破壊している可能性があると指摘する。
「善玉菌が健康な時は、あなたの肌も健やかに保たれているはず。こうした美肌に不可欠な善玉菌は、感染症と闘い、紫外線などの環境による肌へのダメージを抑え、免疫機能を高め、肌に潤いと輝きをもたらしてくれる。けれど、抗菌効果の高いクレンザーを使いすぎることで、こうした健康なバクテリアが肌から除去されてしまう可能性がある。そして、皮膚の健全なマイクロバイオームが破壊されると、吹き出物や酒さ様皮膚炎、乾癬、湿疹、さらには敏感肌といった、さまざまなスキントラブルが引き起こされてしまうのです」
憂慮すべきことに、腸にも同様の現象が起きている。有名人たちが絶大な信頼を置く自然療法専門医で、『Younger Skin Starts in the Gut(若々しい肌は腸から始まる)』の著者であるニグマ・タリブ医師は、こう警告する。
「私を訪ねてくる患者の90%以上が、善玉菌の繁殖が見られない腸の状態にあります。加齢や食生活の乱れ、プロバイオティクスを摂取しないこと、抗生物質の過剰使用、妊娠などはすべて、善玉菌の繁殖に影響を及ぼす可能性があるのです」
アメリカ皮膚科学会も評価する、プロバイオティクスの効能。
こうした状況に救いの手を差し伸べるのは、市場が急成長中のプロバイオティクス、プレバイオティクス、さらには、ポストバイオティクス(ページ下部の用語解説を参照)の商品だ。プロバイオティクスを用いたスキンケアブランド、オーレリア(Aurelia)の創業者であるクレア・ベロは説明する。
「アメリカ皮膚科学会(American Academy of Dermatology)は、皮膚を治癒し、皮膚の炎症を抑え、抗菌効果をもたらす画期的な対策として、プロバイオティクスを評価しています。プロバイオティクスにはさまざまな効果が期待できますが、肌に使用する場合、プロバイオティクスの種類によって得られる結果が変わるため、どの種類が何に効くのか、正しい情報を得ることが重要です」
それでは以下に、1,000種類以上の異なる菌株の中でも、特に皮膚に効くプロバイオティクスを紹介していこう。
スキントラブル別、おすすめプロバイオティクス。
【シミができやすい肌】
サプリ:シャフナーが勧めるのは、消化されないまま大腸まで届き、大腸内の有益な細菌の繁殖に効果を発揮する食物繊維でプレバイオティクスの「イヌリンパウダー(Inulin Powder)」。
コスメティクス:マザーダート(Mother Dirt)のAO+ ミストなど、アンモニアを酸化させるバクテリア、ニトロソモナス ユートロファ(nitrosomonas eutropha)を含むスキンケア商品を推奨するボウ医師は、「1か月のうちに、使用者の肌の透明度が35%向上した」と述べる。また、エンテロシンとして知られる新しい「天然の抗生物質」、エンテロコッカス フェカーリスSL-5(enterococcus faecalis SL-5)を含む商品も期待大とのこと(フェカーリス菌は、腸内フローラにより形成された糞便に由来する菌)。また、ヘクストール医師によると、最近の研究で、「エンテロコッカス フェカーリスの使用により、8週間のうちににきびが50%減少した」ことが証明されたそうだ。
食品:バナナやタマネギ、サツマイモなどのイヌリンを含む自然食品。さらにリンゴ酢は、にきびを抑制する効果があると考えられている。
【乾燥して荒れやすい肌】
サプリ:乳酸菌の一種であるラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)は、乳酸を生成して肌のpHバランスを保つことで、悪い細菌から肌を守る効果がある。
コスメティクス:黄色ブドウ球菌、つまり、スタフィロコッカス アウレウス(staphylococcus aureus)が優占種になると、湿疹を引き起こす。ラ ロッシュ ポゼ(La Roche-Posay)のプレバイオティクス、ターマルウォーターは、黄色ブドウ球菌を減少に導く、健全なバクテリアの増殖を促す効果が期待できる。さらに、同ブランドには、超乾燥肌の症状を改善するとされるビトレオシラ フィリフォルミス菌(vitreoscilla filiformis)の一種であるAPFを含むプレバイオティクス製品、リピカ サンデAP+ フェイス&ボディウォッシュもラインアップされている。
食品:スピルリナとオリーブの皮は、「水分を保つ機能のあるプレバイオティクス」と、シャフナーも勧める。
【敏感で赤みを帯びやすい肌】
サプリ:シャフナーによると、ビフィズス菌の一種であるビフィドバクテリウム ラクティス(Bifidobacterium lactis)や乳酸菌の一種、ラクトバチルス パラカゼイ(lactobacillus paracasei)は、抗炎症作用が高く、赤みを帯びやすい敏感な肌に効果が期待できるという。
コスメティクス:欧州皮膚科学誌『European Journal of Dermatology』で、前述のラクトバチルス パラカゼイ(lactobacillus paracasei)の局所使用が、炎症とアレルギー反応の抑制に効果を発揮したという研究結果が発表された。エリザベス アーデン(Elizabeth Arden)のプロバイオティック ブースト マスクなどにこの成分が含まれ、敏感な肌に潤いを与えたり、肌荒れを抑える効果が期待できるという。
食品:天然のプロバイオティクスを豊富に含む、アロエベラ、ヨーグルト、ケフィアなど。
【老化や日焼けで傷んだ肌】
サプリ:ボウ医師によると、コラーゲンを保護する乳酸菌の一種、ラクトバチルス プランタルム (Lactobacillus plantarum) は、表皮に影響を与えるUVB(紫外線B波)から肌を守り、しわを減らし、肌のハリを復活させることが研究で明らかになっている。
コスメティクス:10年にわたる研究を経て開発されたオーレリア(Aurelia)のスキンケア商品には、生きていない状態のビフィズス菌である糖たんぱく質が含まれる。創業者のクレア・ベロは「花粉やストレスにより引き起こされる免疫反応を抑制することで、コラーゲンへのダメージを減らすため、ほかのプロバイオティクスよりもアンチエイジング効果が高い」と説明する。
食品:クロレラやキノコ類は、ともに老化や日光によるダメージから肌を守る抗酸化作用がある。
【プレバイオティクス】
ボウ医師の説明によると、「プレバイオティクスとは、プロバイオティクスが生き残るために食べるもの」。
肌へのメリット
・栄養をもたらし、良い細菌が繁殖する。
・極めて重要である、“細菌の多様性”を向上する。
【プロバイオティクス】
良い細菌の数を維持したり、元の状態に戻す、生きた微生物。
肌へのメリット
・肌のバリア機能を高める。
・悪い細菌と闘う。
・炎症を抑える。
【ポストバイオティクス】
酵素や酸、ペプチドなどの細菌がもたらす副産物で、肌のバリア機能を高めるもの。
肌へのメリット
・アレルギー反応、皮膚炎、湿疹、にきびに効果的。
・有益な細菌の増殖をサポートする。
1. ベロ曰く、「スキンケア商品の成分表をよく確認すること」。なぜなら、プロバイオティクスの成分が、成分表の上位に記載されていない場合、「希釈され過ぎている可能性が高く、効果を得にくい」という。
2. 良いサプリの見分け方は、「30年にわたり効果が示されてきた乳酸菌、ラクトバチルス アシドフィルスDDS-1(lactobacillus acidophilus DDS-1)を含むものを選ぶこと」とタリブ医師。
3. ボウ医師によると、プロバイオティクスを胃酸から守り、腸まで届けるためには、「遅延放出性のサプリがいい」とのこと。
4. まずは、100~150億CFU(コロニー形成単位)のプロバイオティクスからはじめ、徐々に数値を上げていくのがいいと勧めるのは、ボウ医師。最初から高い数値のものを使うと、「腸内にコロニーが再形成される際に、腹部膨満感が起こる可能性がある」とのこと。
5. フランクリンは、「プロバイオティクスのスキンケア商品は、光や空気に弱い。そのため、ガラス製でない、空気を含まないエアレス容器がベスト」とアドバイス。
カミラ・シャフナー(Kamilla Schaffner)
臨床栄養学に基づいた食事療法を専門とする、マイロンドンニュートリショニスト(My London Nutritionist)のオーナー、臨床栄養士。
リサ・フランクリン(Lisa Franklin)
スキンケア専門家、フェイシャリスト。ロンドンを拠点に、自身のスキンケアサロン、クリニック・プリヴェ(Clinic Privé)を主宰。
ジャスティーン・ヘクストール医師(Dr. Justine Hexhall)
タラントストリート・クリニック顧問皮膚科医、イギリス王立内科医協会フェロー。顔の皮膚ガン治療の専門医でもある。
ホイットニー・ボウ医師(Dr. Whitney Bowe)
栄養とスキンケアを主な研究領域としてニューヨークで活動する皮膚科医。『The Beauty of Dirty Skin(肌荒れの美)』著者。
ニグマ・タリブ医師(Dr. Nigma Talib)
自然療法専門医、カナダの「West Vancouver Wellness Centre」創設者兼所長。『Younger Skin Starts in the Gut(若々しい肌は腸から始まる)』著者。
クレア・ベロ(Claire Vero)
皮膚科学の世界的な研究機関を経て、プロバイオティクス・スキンケアブランド、オーレリア(Aurelia)を創業。
https://www.vogue.co.jp/beauty/expert/2018-08-01/probiotics-for-skin/cnihub
(2018年07月31日(VOGUE JAPAN)